カンガルーマンの暇つぶし

暇つぶしです。言語化しないと、意味がない気がして。

マーチ博士の四人の息子<感想・ネタバレ>

  1. マーチ博士の四人の息子

ブリジット・オーベル 作   堀 茂樹・藤本優子 訳

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1992年に書かれたオーベルの処女作である。今まで多数の本を読んできたが、本作のように、ホームズ役である家政婦と殺人者の日記を通して物語が展開していくものは初めて見た。

本作は、家政婦が働き口のマーチ家で殺人者の日記を見つけることから始まる。殺人者自身が、この家の子どもであることを自供していること等から、家政婦は、マーチ家の4人の美青年達の中の中にいる犯人を探していくという物語だ。

この物語の犯人は、女性を殺したいという強い殺人衝動を抑えられなくなった人物だ。物語の中で、何人もの女性を殺していく。時には刺し殺し、突き落とし、事故に見せかけ多様な方法で殺して行くがそこに、美しさはなく、単なる衝動的な殺人である。

真犯人は、家政婦の二重人格とか兄弟の中にいないといった展開でなかったことはありがたかった。だが、あの展開で行くのならタイトルを「マーチ博士の息子達」のようなものに変えておいて欲しかったなと感じた。

日記形式で物語が展開していくので、家政婦のメタフォリカルな視点での考察等があり、面白かった。単純な自己内省に留まるのではなく、日記中に自己の葛藤を記しながら、自分の考えを整理して行く家政婦の様子を丁寧に描写していたことが本作で最も秀でていた点であったように思う。

ミステリー小説好きは一読する価値があると思いますが、それ以外の方は、平坦な展開に退屈してしまう人もいるかもしれません。