カンガルーマンの暇つぶし

暇つぶしです。言語化しないと、意味がない気がして。

いじめを生む教室 子どもを守るために知っておきたいデータと知識 感想

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学校現場においけるいじめ問題について、様々な実証研究を取り上げながら論じていくいじめ研究の集大成の書です。

どのような環境でいじめが起きやすいかという問題から、どのような属性に基づいたいじめが長期化につながりやすいのかについてわかりやすくまとめています。現場の先生方は一読しておく価値があるように思います。

一時期、いじめ研究を片っ端から目を通していた時期があったこともあり、前半部のデータは見たことが多かったので、肩透かしを喰らったように感じていましたが、中盤あたりから論じられていくセクシュアルマイノリティのいじめ問題については、非常に興味深いと感じました。

著者が、学習指導要領の改定に関する議論の際、「思春期に異性への関心が高まる」という保健教育への記述に疑問符を抱いている点に非常に共感することができました。これからの性教育において、セクシュアルマイノリティに対する態度や知識についても学んでいく必要があると感じているため、そのための教育について、性的違和を感じている子ども達にどのような支援をしていくのかについても考えていく必要があると感じました。

 

また、後半部では、ネットいじめについても論じられていきます。現代社会ならではの、特徴的ないじめという印象の強いネットいじめですが、著者は、従来のコミュニケーション操作型のいじめに過ぎないと論じていきます。現実次元で被害者になりやす子は、インターネットの世界でも標的になりやすいにすぎない。いじめ防止教育の徹底を行う必要性についても論じられています。

 

最後になりますが、「学校の先生の力でいじめをなくせ」と主張するばかりではなく、現場の先生方の労働環境の問題へとメスを入れてくださり、現場への理解を示した上での提案をしてくださっている萩上チキ先生に感謝と尊敬の念を抱いた書となったことを記しておきます。ありがとうございます。